天使の罠 6
そして―。
「まことに、申し訳ございませんっ!!」
一夜明けたギルモア邸のリビングでは、石原医師と松井刑事―いや、警視庁薬物対策課管理官、松井警視の二人が揃って床に直接座り込み、額をカーペットに擦りつけんばかりに平身低頭していた。
「い、いや…。頼むから二人とも、どうか頭を上げてくれたまえ。今回の件は決して、君たちの所為じゃないんじゃから…」
困ってしまったのはギルモア博士と、その腕に抱かれたイワンである。他のメンバーたちの姿は、ここにはない。全員、重症の二日酔いでメディカルルームのベッドの上、洗面器を抱えて呻吟している。…揃って大酒かっ喰らった上に「光順会」との大立ち回りをやらかしたのだから、それも仕方のないことではあるのだが…。
(…やれやれ。しかし、さんざん呑んだくれたあとで暴れたりしたらどうなるか、少し考えればわかりそうなものじゃがなぁ。うちの子供たちにはどうも、「自制心」というものが足りなくていかん。こりゃ、次のメンテナンスでは、全員の補助電子頭脳プログラムを丸ごと書き換えなければならんかのう…)
思いがけない場面で自らの、いや、BGの設計ミスを思い知らされたギルモア博士の肩はがっくりと落ちていた。だが―松井警視の方にもそう簡単には頭を上げられない理由がある。
昨夜逮捕した連中を徹夜で取り調べた結果、大体の真相は松井警視たち警察が推測した通りであった。
主犯格はT大在籍中の学生五名とS薬科大在籍中の学生二名。どいつもこいつも小学生の頃から秀才の誉れ高く、名門私立中高から一流大学へと難なく進んできたいわゆる「エリート」と呼ばれる者たち。すでに半ば形骸化した「学歴社会」の呪縛から逃れられない大人たちに囲まれ、「勉強ができる」、ただそれだけのことで常にちやほやと甘やかされてきた彼らだったが、それは高校を卒業するまでのこと。
それまで過ごしてきた狭い世界の中ならばともかく、全国から同様の秀才が集まってくる「大学」という場においては、彼らは皆ごく普通の学生、十把一からげの一般人にしか過ぎなかった。もし彼らに本当の賢さというものがあれば、自己の器を客観的に判断し、与えられた能力の範囲で新しい世界を切り開いていく手段を探し当てたに違いない。
だが、それまでの間に異常なほど膨れ上がった彼らの自尊心は、そのような地道な努力になど目もくれなかった。
(自分たちは、他の連中とは違う)
(こんな、「ごく当たり前の存在」であるわけがない)
(何とかして、自分たちの「偉大な能力」を世間に知らしめる手立てはないか)
そして、醜く肥大した自惚れの暴走は、やがて麻薬精製、そしてその売買と言う最悪の手段にたどり着いた。
S薬科大の二人が偶然手に入れた大麻の種をもとにささやかな効き目の薬をまず作り出し、コンピューターネットを通じてごく小規模に、そして秘密裏に売り出し始めた。やがて、客として知り合ったT大の連中と意気投合し、より強力な薬をより広範囲に売りさばこうと知恵を出し合い―ついにはとある広域暴力団にわたりをつけ、こっそり横流ししてもらったヘロインやコカインから「エンジェルキッス」を作り出して大々的な販売に手を染めたというわけである。盛り場で遊び歩く無数の若者たちにじわじわと広がる自分たちの薬。熱狂する中毒者。手足のように動く売人、運び屋。集まる金。そんなものが、彼らにとっては小さな頃から慣れ親しんだ賞賛と優越感の代用品になったのかもしれない。
いつだったか松井警視がもらした「小さな頃から甘やかされて育ったおかげで自由と自分勝手とをはき違えた奴ら」という言葉は、ものの見事に今回の犯人像を言い当てていたわけである。
だが。
松井警視、そして警察はたった一つだけ―しかし致命的な失敗を犯してしまったのであった。
それは例の「参加するために来た」という合言葉。証言してくれた運び屋―外国人留学生は決して嘘をついてはいなかったが、運の悪いことにまだ来日してから数ヶ月しかたっていなかった。当然、日常会話や自分の専攻科目関連の用語ならともかく、その他の日本語となると―かなり、怪しい。ちなみに、彼の専攻は原子物理学だったりする。
しかも彼は、主犯格の連中から直接それを教えてもらったわけではない。あの悪賢い奴らが、使い捨ての道具である運び屋などにそんな大事な情報をもらすはずがないのだ。彼がそれを知ったのは、たまたま一緒にいた売人の携帯電話に入った会話から、聞くともなしに小耳に挟んだからに過ぎない。
証言者本人もそれを心配していたし、捜査本部の中にもそんな証言の信憑性を危ぶむ声はあったものの、そういう事情だけに他の運び屋から裏を取ることも不可能で―まぁ、その他の状況証拠から見てもあの店が怪しいことには違いないし、客が参加するチャレンジイベントなんぞもやってるんだから、ここはともかく当たって砕けてみるか、という松井警視の決断のもと決行された「たこ八」への潜入、囮捜査は、警察にとってもかなり無謀な見切り発車、危険な賭けだったのである。
で。その結果はというと…(できれば作者も言いたくないんですけど)。
「エンジェルキッス」の隠し倉庫がS川の河口、小さな三角州にあったことを思い出していただきたい。精製した麻薬を自宅においておくことを危ぶんだ学生たちは、すべての薬をいったんそこに運び込んだ上で少しずつ「たこ八」に持ち込み、店主を脅して売人それぞれに分配させていたのだ。
ここまで言えばお解かりであろう。そう、正しい合言葉は「参加するために来た」ではなく、「三角州から来た」だったのだ―。
「サンカクスカラキタ」
「サンカスルタメニキタ」
ああ、たかが三角州、されど三角州。純粋な日本人にも馴染みの薄い地理学用語を、来日して日が浅い原子物理学専攻の留学生が間違えてしまうのも仕方がないし、決して責められるべきものではない。
だが、どんな理由があろうとも。
結局のところ、松井警視や00ナンバーたちがあのチャレンジに挑戦し、見事玉砕して味わった(いや、後者はまさしく今、その真っ只中にいるのだが)地獄の苦しみが、はっきり言って全部無駄…だったということだけは、動かしようのない事実なのであった。
「あのこれ、せめてものお詫びのしるしですっ。水分とブドウ糖補給の点滴セット一式…点滴って、二日酔いの特効薬なもんで…もしよければ、僕がこれから皆さんに処置しますから…」
「費用は憚りながらすべて警視庁と所轄署で負担させていただきますっ。何卒、お納め下さい!」
そう言われて再び額を床にこすりつけられては、ギルモア博士もイワンもただ、うなづくしかない。
(まあ、今回アルコールでやられたのは肝臓と消化器系臓器…一番生身の部分を残している部分じゃから、普通人と同じ手当てが一番かもしれんな)
八人分の薬品や器具をつめた大きな荷物を二人がかりで担ぎ、えっちらおっちらと地下のメディカルルームへと向かう石原医師と松井警視の後姿を見送りながら、ギルモア博士とイワンは顔を見合わせ、やれやれと大きなため息をついたのであった。
秋はかなり深まってきた。青々と澄んだ空が高い。ジョーとアルベルト、そして松井警視の三人は、連れ立ってS川の川べりを歩きながら誰からともなく空を見上げ、清涼な秋の空気を一杯に胸に吸い込んだ。
彼らが向かっているのは、「光栄建設」本社―言葉をかえて言うなら、「光順会」本部事務所である。
「光順会の爺さん、えらく恐縮してたぜ。『本来ならこちらがお礼とお詫びに伺わなくてはならんのに』とか言ってさ」
「そんなことないですよ。…それに、こちらから伺いたいって言い出したのは僕たちの方なんですから」
真っ白な百合に青紫の桔梗やりんどうを添えた花束を手に、ジョーが微笑んだ。そう、二人は今日、メンバーたちを代表して崎田の霊前にお参りをしにきたのである。
行く手に見えてきた「たこ八」の店舗は、あのとき店長もまた逮捕されてしまったおかげで現在空き家になっていた。閉ざされたシャッターに貼られた「テナント募集中」のポスターがはがれかけ、風に揺れているのが淋しい。
「あの店長…脅迫されていたんでしょう?」
「…ああ。あいつもバカだぜ。女よりも若くてほっそりした男が好き、ってぇのは持って生まれた性癖で仕方がないにしても、よりにもよってあのリーダーに痴漢行為しかけたなんて、ケッタクソ悪い。あのガキャ、取り調べた学生どもの中で一番タチが悪くて鼻持ちならねえ。おまけに見てくれも大したことねぇように思えるんだけどよ。俺がもしその手のシュミの持ち主だったら、迷わずお前さんを襲うんだがな。…ノーマルな男でも、お前さん相手ならいっぺんくらいお願いしてぇって思うかもしれないぜ」
「なっ…!!」
途端に真っ赤になるジョー、ぴくりと眉を跳ね上げ、さり気なく右手のマシンガンを構えたアルベルト。そんな二人を見ながら、松井警視は大声で笑い出した。
「バァカ、冗談だよ、冗談! いくら可愛くてもヤロー相手なんて、俺ゃ頼まれたって願い下げだ。しっぽりいい仲になるんなら、やっぱ柔らかくていい匂いのする女が一番さ」
そんなことを言い合っているうちに、いつしか目的地に着いた。下町の、小さなビルディング。壁にとりつけられた袖看板にはくっきりと『光栄建設』の四文字。さすがに、『光順会事務所』とは書いていない(当たり前だ)。
「ちわーっす。邪魔するぜ」
近所の家に茶飲み話でもしにきたような気軽さで松井警視がビルの中に入っていくと。
「お疲れ様でございやす!」
何と、オフィスの中には先日の男たちが勢揃いして、最敬礼で彼らを迎えてくれた。ジョーとアルベルトがさすがに少しぎくりとしたように動きを止める。が、松井警視は軽く会釈をしただけだった。
「おお、これはこれは…先日はお世話になりましたのう」
オフィスの奥からよたよたと進み出てきたのはあのときの老爺、いや、光順会大親分、光井順三郎。相変わらずの着流しスタイルだが、今日は襷も尻はしょりもなし、どこからどう見ても町の上品なご隠居である。
「何はともあれ、どうぞこちらへ。何のおもてなしもできませんがな」
示されたのはオフィスの一角にある応接セット。こんな下町の零細企業にしては中々いい調度品を取り揃えてある。その脇に開いたスペースには、崎田のものであろう遺影と白布で覆われた骨箱を置いた簡素な祭壇が作られ、あふれんばかりの花々がその周囲を飾っていた。
「こいつには、身寄りがありませんでな…四十九日が済んだら、わしの菩提寺にある光栄建設社員の墓に葬ってやるつもりです。…うちは外国人の社員も多い。建設業という仕事柄、ときに事故で亡くなる者もいるんじゃが、中には母国の家族と連絡の取れないこともありましてな」
そこで光井はちらりと松井警視を見た。…そんな連中は十中八九、不法滞在者。警察官なら当然とがめだてをするところだが、松井警視は黙って二、三度、うなづいただけだった。
「…そんな連中とも崎田は仲良しじゃったから、多分淋しゅうはありませんじゃろう」
しみじみと、しかし満足げな光井のつぶやきを聞きながら、ジョーは持ってきた花束をそっと祭壇に置き、アルベルトと並んで静かに手を合わせた。遺影の中の崎田はまるで巌のようなごつい顔つきの男だったが、それでも、子供のように無邪気に笑っている。
(…ちょっと怖そうだけど、きっとこの人は優しい人だったんだろうな)
ジョーの胸が、ほんの少しだけ切なくなった。
「…崎田も、災難だったよな。…でもまぁ、あの学生たちに殺されたんじゃないだけ、俺は幾分ほっとしてるんだ。こまっしゃくれてて思い上がった、鼻持ちならねぇ奴らだが、人を殺すほど腐っちゃいなかったってわかってよ…おっと、こんなこと、被害者の関係者…それも家族同然だった人間に話すこっちゃねぇな。すまん」
応接セットのソファに腰を落ち着けた松井警視が頭を下げる。だが、光井は笑って手を振っただけだった。
「いや、気にせんで下さい。わしも同じ気持ちですじゃ。『素人さんにはご迷惑をかけちゃいけねぇ』、そんなヤクザの仁義を守り通した崎田が当の素人さんに殺されたとなっちゃ、あんまり不憫すぎます。…だから―それで、いいんですじゃ」
取調べの結果、もう一つわかったこと。―崎田の死の、真相。
あの夜、やはり崎田は「たこ八」に怒鳴り込みに行ったのだ。しかも、ちょうどそのときは例の学生どもが「エンジェルキッス」を運び込んできたところで―。
翌日予定されていた取引はかなりの大口だった。当然、薬を取りに来る売人どもの数も多い。そこで、学生どもは「たこ八」で荷を開け、引渡しのために薬を小分けにしていたのだ。そこへ、崎田が怒鳴り込んできたのだからたまらない。
一応施錠していた店の戸を叩くわ蹴るわ…店長がガラス越しに応対してなだめようとしても一歩も引かない。そこで仕方なく、散らかった薬を大急ぎで再び箱に収めて学生たちごと店の調理場に隠し―とりあえず大丈夫となったところで店長は崎田を店に入れた。
それまでにかなりの酒を飲んでいた崎田は完全に酔っ払っていて、店に入ったもののろくな家捜しもせず、ひとしきり暴言を吐いたり、椅子やテーブルを蹴倒しただけで素直に引き上げようとした。
だが―。
そのとき店長は、レジの前の床に転がっているいくつかの「エンジェルキッス」の袋を見つけてしまったのだ。慌てていた学生たちが片づけ忘れたのであろう。こんなものを見られたら、どうなるかわからない。とっさにそれを拾い上げ、レジの上に置いてあったサービス用の駄菓子の篭―飲食店などでよく見かける、「ご自由にお持ち下さい」というあれだ―の中に放り込み、ごまかした、つもりだったのに。
何と崎田は腹いせのつもりか、その篭の中の駄菓子をわしづかみにしてポケットに納め、なおもぶつぶつ文句を言いながら出て行ったのである。
(私には、どうしていいかわかりませんでした。引き止めて取り返すなんて思いもつかず…だからと言って、あの学生たちに話すこともまた、怖くてできなくて……結局、落ちていた「エンジェルキッス」の袋は全部、あの人に持っていかれてしまったんです)
そう言って、店長は男泣きに泣いたという。
「崎田は子供の頃、えらく貧乏だったと言うておりました…わずか十円、二十円の駄菓子もろくろく買えなかったそうです。その所為か、いい年した酒飲みのくせに甘いものにも目がなくて…しかも、口一杯にほおばって食うんですじゃ。口の中一杯に甘い味が広がると、何とも言えない幸せな気分になれると言うて…全く、行儀の悪い…こればっかりはわしがいくら叱っても直りませんでした」
そう言って、光井は淋しげに笑った。…おそらく崎田は「たこ八」から持ってきた駄菓子を、いつもの癖で口一杯にほおばり、いっぺんに食べてしまったのだろう。「エンジェルキッス」の袋は市販のキャンディの四分の一ほどの大きさ、多分、一袋くらいなら一度に食べても致死量には至らなかったはずだが、それ以上となると…。
「結局、崎田の死だけは、あいつの自業自得ということだったんですかのう…」
光井がもう一度、淋しくて、そして哀しくてたまらない笑顔をその皺だらけの顔に浮かべた。
三人が「光栄建設」を辞去するとき、光井は玄関まで見送りに出てくれた。
「本当に今日は、崎田のためにどうもありがとうございました」
「いいってことよ。それより爺さん。これに懲りて少しはおとなしくしててくれや。この間の件もその前のも、書類送検だけでごまかすのに俺ゃどえれぇ苦労をしたんだぜ」
ぼやいても、にこにこと笑うだけで何も答えない光井。松井警視が、やれやれと肩をすくめた。と―
「お爺ちゃん!」
可愛らしい声に皆が振り返れば、そこには四、五人の町の子供たちが立っていた。
「これ…崎田のおじちゃんにお供えしてよ。みんなで、お小遣い出しあって買ったんだ」
一番年上らしい、十歳くらいの男の子が差し出した包みは、駄菓子屋でよく売っている、黒砂糖をたっぷりと塗った黒褐色の―麩菓子。
「僕たちみんな、おじちゃんには優しくしてもらったから…僕ねぇ、学校帰りに大きないじめっ子にぶたれそうになったとき、助けてもらったんだよ」
「僕は、自転車で土手から落ちたとき、石原先生のトコへおぶって連れてってもらった」
「うちのお婆ちゃんは、道端で心臓の発作起こしたとき、救急車呼んでもらったのよ」
もう一人の女の子が、やや小さい包みを差し出す。
「こっちはねぇ、駄菓子屋のおばちゃんが『お爺ちゃんたちにもどうぞ』って。おまけしてくれたの」
光井の目が、細くなる。何度もぺこぺこと頭を下げ、子供たちから包みを受け取る姿はまぎれもない好々爺だ。
「ねぇ、お爺ちゃん、食べてみてよ。とっても美味しいんだよ、これ。おじちゃんも、大好きだったんだ」
子供たちに促され、光井は包みから麩菓子を一本取り出してかじる。そして、松井警視やジョー、そしてアルベルトにも差し出した。
「…崎田のおじちゃん、優しかったよね」
「うん。それに強かった」
「正義の味方だったんだよ」
口々に言う子供たちに、光井の―ほんの少し―厳しい声が飛ぶ。
「やめんかい! あんな奴、正義の味方でも何でもないわい! あんな…あんなバカモノが…ヤクザやるしか能のなかった、行儀の悪い、あんな男が…」
涙交じりのその声に、子供たちが怪訝な顔を向ける。
「え…? おじちゃん、バカだったの?」
「悪い人だったの?」
「正義の味方じゃ、なかったの…」
麩菓子を噛みしめながらぽろぽろと涙を流す光井の背中を、松井警視がそっと叩いた。
「…爺さん。ガキ相手にそんなこと言っちゃ、いけねぇぜ」
そして、子供たちの傍らに膝をついたジョー。
「違うよ。崎田のおじちゃんは、やっぱり強くて優しい正義の味方だったんだよ。悪い人が、怖いお薬をみんなに飲ませようとしてたのを命がけで止めた…そんな、立派な人だったんだよ…」
「本当…?」
子供たちの目が、すがるようにジョーを見る。
「…ああ、本当だ。薬ってのは、みんなの病気を治してくれる。だけど、中には飲んだら死んじまうような怖い薬もあるんだ。…だからみんな、お医者さんや薬屋さんがくれる以外の薬は絶対に、飲むんじゃないぞ。それが、崎田のおじさんとの約束だ」
傍らから言い添えたアルベルトの言葉に、子供たちはいっせいにうなづく。
その様子を、なおも涙ぐみながら見つめている光井、その肩に手を置いたまま、袋から取り出した麩菓子を一口豪快にかじり取った松井警視。
人々の間を、心地よい秋の風がふんわりと通り過ぎていった。
〈了〉
あとがきとお詫び
800番を踏んで下さいました、HOIHO様へのキリリクです。お題は「メンバーたちがミッションで居酒屋に行く話」。管理人にとってはまさに渡りに船、ツボ突きまくりのリクエスト! 喜々として書き始めたら、これがだらだらだらだら続く続く…。初めのうちは「四〜五回で終りますから」などと言っていたくせに、そんな予告も見事破って全六回、とんでもなくかさばる献上品になってしまいました。
HOIHO様、このようなシロモノを快くお引き取り下さり本当にありがとうございした(平伏っ)。こんな文章だだ洩れのオバサンではございますが、これからも何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、弊サイトでのキリリクはこれからも「言ったもん勝ち」をモットーに続けて行くつもりでございますので、それらしい番号(百番区切りとか、どこか意味ありげな番号とか)を踏まれた方はどうぞ、ご遠慮なくお申しつけ下さいませ(…って、まだやる気か、図々しい>自分!)。